まずは脂肪のメカニズムから解説したいと思います。
脂肪は体内にある脂肪細胞と大きな関係をもっています。体に入るカロリーが、体を動かすなどして消費するカロリーを超えると「脂肪」という形で体に蓄えられていきます。脂肪細胞の数は、思春期を過ぎると一定に達しそれ以上増えることはないと考えられています。それでは、何故太ったりするのでしょうか?
それは脂肪細胞が過度のカロリー摂取によって肥大することが原因なのです。このような脂肪細胞を物理的に取り除いてしまうのが「脂肪吸引」です。また、脂肪細胞を取り除くのではなく、小さくするのが「ダイエット」なのです。
ダイエットの場合は、カロリー摂取量が増えると小さくなっていた脂肪細胞はすぐ肥大して体重が増加し太ります。脂肪吸引の場合は、吸引によって脂肪細胞の数が減っていることと、残っている脂肪細胞の周囲が吸引による傷で少し固い環境になっているため、脂肪細胞も肥大しにくく、その結果、カロリー摂取が多少増えても太りにくいということが言えます。
一般的にはカニューレという吸引管と吸引器を用いて皮下脂肪を除去する方法です。
直径数ミリから1センチ位までの管を皮膚に開けた穴に通して脂肪を吸い出します。その際、神経や血管の損傷を少なくするために生理食塩水に止血剤を混ぜた溶液をあらかじめ皮下脂肪層に入れて十分膨らませ、脂肪組織と結合組織をゆるやかにし吸引しやすくします。
このようなWet-methodという方法が現在では主流になっています。
また最近では、超音波を用いて脂肪細胞を破壊して吸引しやすくする方法や、エルコーニアのように体外からレーザーを照射し脂肪を液体化させ吸収しやすくしたり、スマートリポのようにカニューレを通して直接脂肪層にヤグレーザーを照射して衝撃波と熱エネルギーで脂肪を分解し、自然排泄させる方法、さらにジェット水流を利用して吸引するボディジェットなどの方法があります。
その他、脂肪を溶かす薬剤を注射で脂肪層に流し込んで行う脂肪溶解(メソセラピー)や、炭酸ガスを脂肪層に入れて行うカーボメット(カルボキシセラピー)などいろいろな取り組みがなされています。
超音波やレーザー及び水流を使用することで、脂肪吸引は手術時間が短縮され、術者の体力的負担も減少し、以前に比べるとずいぶん楽になったように思われます。
しかしながら、手術の仕上がり具合に関しては、やはり上手い下手があり、吸引方法が変わったからと言って誰にでも簡単にという訳にはいかないようです。脂肪が十分とれていないとか、とれている部分ととれていない部分があるとか、でこぼこしている等のクレームが後をたたないようです。
脂肪吸引という手術は、たくさん脂肪をとることも大切ですが、決して吸引した脂肪の量を競うものではありません。体型や全身の脂肪のつき具合から、どのあたりからどれくらいの量の脂肪をとれば良いかという判断も重要です。その上で、さらに凹凸にならないように均一に吸引する技術が必要とされます。
脂肪吸引の最大の欠点とは、術者の技術力によって結果に大きな差がでるということです。
メソテラピーやカルボキシセラピーは、入れる薬剤の種類や量、範囲によって多少結果に違いはあっても大きな差が出るようなことはないように思います。
ところが脂肪吸引は、技術の優れた医師とそうでない医師とでは、誰が見てもはっきりわかるくらいの違いが出ます。
安全性に関しては、脂肪吸引は、一度に何ヶ所も吸引し大量の脂肪を除去するようなことをしなければ、決して危険な手術ではありません。当院で行っているように、局所麻酔で手術する場合は、麻酔が効いているのは、手術する範囲のみで、内臓やその他の部分は正常に働いています。
また、局所麻酔量も安全な範囲で行っている限りは、危険性は少ないと思います。
どのような手術もそうですが、100%安全というものはありません。多かれ少なかれリスクはあるものです。
しかし、安全面を考えて慎重に行っておれば、リスクも必要最小限に抑えることができると思います。
カウンセリングでは、脂肪の構造や吸引後の脂肪層の状態を図やレントゲン写真等でわかりやすく説明しています。
また、体重や脂肪率の測定及び触診によって皮下脂肪のつき具合や、手術後予想される変化についてもお話しています。
さらに麻酔方法や手術方法、及び腫れや内出血等の術後の経過や注意事項をモニター写真を見ていただきながら詳しく説明しています。
予約を希望される場合は、カウンセリング内容を十分ご理解していただいた上で、後日、手術の予約をお受け致しております。
マーキングは、手術当日、患者様のご希望をもう一度確認し、施術部位にマーカーで印をつけていきます。患者様は、遠慮されずにご希望をお伝え下さい。実際の脂肪吸引は、このマーキングを目安に行われます。
私が手の力のみで脂肪吸引を行う一番の理由は、手術中に、瞬時に吸引力の微調整がしやすいということです。吸引器は、機械の力で強引に脂肪を吸い取ろうとします。皮膚に近い浅い層のように脂肪を少し残しぎみに吸引した方が良い部分や、ふくらはぎのようにカーブの多い部分では、特に手の力で微調整しながら吸引した方がキレイに仕上がるように思います。
術前
1週間後
7ヶ月後
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術後
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