ボトックス注射とは?

ボトックスについて

顔のしわ、とくに額・眉間・目尻など表情を変化させた時に現れるしわに効果的な治療が「ボトックス注射」です。
「ボトックス」とは、ボツリヌス菌により産生される「A型ボツリヌス毒素」を有効成分とする注射剤のこと。ボトックスは、局所的な神経筋伝達阻害作用があり、筋肉を弛緩させる働きをします。そのため、しわの治療だけでなく、上肢痙縮・下肢痙縮・痙性斜頸・眼瞼痙攣・片側顔面痙攣といった症状の治療にも活用されているのです。
ボトックスは、アメリカ、イギリスを含む80カ国以上の国で承認されていて、世界中の多くの人がボトックスによる治療を受けています。

ボツリヌス毒素

ボトックスと関わりの深い「ボツリヌス毒素」ですが、毒素自体はボツリヌス菌食中毒の原因となることで知られています。ボツリヌス毒素は抗原性の違いによって、A・B・C・D・E・F・Gの7型に分類されています。この中でA型がボトックスに使われている成分に当たります。 ボツリヌス菌の毒素は毒性が高く、下痢・嘔吐・悪心など、消化器系の症状を起こします。さらには頭痛・めまい・視力低下・複視などを起こし、ひどくなると自律神経障害や四肢麻痺に至ることもあります。
しかしながら、ボツリヌス菌は加熱やアルカリで処理することで毒性がなくなるため、十分な加熱で中毒を防ぐことができます。また、ボトックス注射で上記のような症状がおきることはありません。

ボトックスの歴史

ボツリヌス毒素の研究が発展したのは、第二次世界大戦時のこと。当時は生物兵器として研究されていました。その後、1960年代の後半になると、ボツリヌス毒素の持つ神経毒性を利用する試みがスタート。ごく少量を注射し、筋緊張亢進を局所的に緩和する研究が行われるようになりました。
そして1981年、斜視の治療で微量のA型毒素が使用されたことを皮切りに、臨床応用の検討も進められるように。米国では1989年に承認され、日本では1996年に眼瞼痙攣の治療として承認されました。 日本国内の美容医療のしわ改善の治療薬としては、承認されるのにさらに時間がかかり、「65歳未満の成人における眉間の表情じわ」を効能・効果として、2009年に承認されました。これにより、国内のアンチエイジング治療の幅も広がり、今では多くの人がこの治療法で施術を受けています。

信頼できる医療機関で受診する

診療の様子

しわの改善としてメジャーな治療法となっているボトックス注射ですが、近年は安価なボツリヌス毒素製剤が出回っています。そのような製剤は、不純物が多く含まれていることもあり、効果や安全性も不確かです。副作用の心配もあるので、ボトックス注射を希望する場合は、信頼のおける医療機関でカウンセリングを受けてからにしましょう。